企業の実践例

平成25年度「真のワーク・ライフ・バランス」推進企業 特別賞 株式会社一保堂茶舗株式会社一保堂茶舗カブシキガイシャ イッポドウチャホ

一保堂茶舗の創業は江戸時代の享保年間。山階宮より「茶、一つを保つように」と「一保堂」の屋号を賜った京都を代表する老舗企業です。女性の従業員数は7割を超えており、乳がん検診の全額会社負担や、育児短時間勤務制度の取得を推進しています。 今回は、ワーク・ライフ・バランスの向上に努める社員の方々に、お話をうかがうことができました。

総務グループ 人事チーム チーフ富田 貴之さん

お互いが支えあう雰囲気づくりが大切

◆お互いが支えあう雰囲気づくりが大切◆
 「『真のワーク・ライフ・バランス 特別賞』をいただいたものの、何か特別な制度を整えているわけではないのですが…」と切り出すのは総務グループ人事チームのチーフである富田貴之さん。とはいえ、育児による短時間勤務が法定では3歳未満のところを小学校就学前までに延長したり、子どもの看護休暇が法定では年間5日までのところを育休復帰者には無制限にするなど、休暇制度は育児・介護休業法などで定められた基準以上に設定するといった取組をしているそうです。
 「社員の家庭の事情はそれぞれ異なります。お子さんにしても、体の強い子もいれば病気がちな子もいます。休暇の取得日数などに制限があっては安心して仕事に打ち込むことができませんから」と言います。しかし、こうした制度よりも、大切なことは産休に入る以前から,職場への貢献意欲を持っていかに仕事に取り組んできたかだそうです。制度を使用しているとはいえ,長期間職場を離れることへの後ろめたさは当然あります。しかし,それまでの信頼関係があるからこそ周囲は快くフォローする,感謝から限られた時間で人一倍がんばる,という好循環が生まれるそうです。
 「働きやすい環境は会社が整えるのではなく,自分で築き上げるものと,みな理解しています。ワーク・ライフ・バランスとあえて言葉にしなくても,昔から受け継がれてきた考え方でしょう」と老舗企業の力を実感しています。

◆現行制度の一歩先を目指して◆
 せっかく育った人材が辞めてしまうのは、会社としては辛いところ。「成長意欲や会社への貢献意欲を持ち続けた社員には当然長く勤めてほしい。今後は比較的休暇制度を取りやすい本社勤務スタッフだけでなく、店舗での販売部門も制度利用をしやすくする必要があります」と意気込みを語ります。社員全員がワーク・ライフ・バランスを実現できるよう、現在抱えている課題にも積極的に取り組みたいそうです。
 現在、社員の約15%が取得している「日本茶インストラクター」など、資格取得のための支援制度を設けることもそうした課題の一つ。「一人一人が同じように能力を伸ばしていくのではなく、それぞれの個性を生かしたキャリア形成を支援していきたいですね。仕事に生かせる知識や能力が磨かれれば、その人のワーク・ライフ・バランス向上につながります。また、そういったさまざまな能力に秀でた人が集まった会社は、とても強い会社であると思うのです」と最後に語っていただきました。今後の一保堂茶舗の取組も期待できそうです。

企画部 企画広報室 リーダー足利 文子さん

仕事もプライベートも楽しむために

 企画広報グループリーダーの足利文子さんは2002年入社。現在所属する企画広報グループが立ち上がった、2006年からリーダーを務めています。
 「女性4名,男性2名,嘱託スタッフ1名の部署です。仕事は2つに大別されます。商品企画及びパッケージ開発,各種カタログ制作などの制作系の仕事とお茶の淹れ方教室や取材対応などのPRの仕事です」と足利さん。
 職場のリーダーとして、家庭では一児の母として、どちらも楽しみたいという足利さんはこう続けます。
 「部内スタッフにも充実した時間を過ごしてもらいたいです。各々に適した仕事を任せることで,完遂したときの達成感を味わってもらいたい,結果それは充実した時間につながると考えています」。
 そして家事や仕事がしんどい時には夫や職場の仲間に頼り,また会社の休業制度を上手に活用する一方で,仕事のうえでは自分の責任をしっかり果たし,他のスタッフが困っている時にはお互いに手をさしだすことが,ワーク・ライフ・バランスのとれた生活をするコツであると語ってくれました。

本店グループ営業事務石山 純子さん

子育てをしながら長く働ける環境に感謝

 現在、育児による短時間勤務制度を利用しているのは、本店グループ営業事務の石山純子さん。2008年、一保堂茶舗に中途採用で入社したそうですが、そのきっかけとなったのは、京都市男女共同参画推進課のホームページを見たことなのだとか。
 「出産した後も長く働くことができる企業を探していたところ、ホームページのリストに 一保堂茶舗の名前を見つけました。転職とほぼ同時期に入籍したのですが、近い将来産休・育休制度を利用するかもしれない、としっかり伝えた上で採用してもらえました」と当時を振り返ります。
 2010年に取得した育休明けにはスムーズに職場復帰でき、休業制度自体も現行の制度で充分満足しているそうです。「今は1時間の短時間勤務制度を利用しています。精神的にゆとりが持てますね。仕事と家庭生活に良いサイクルが生まれている気がします」と話す石山さん。充実した表情が印象的です。

株式会社一保堂茶舗

事業内容 京銘茶の加工・製造及び販売
本社 京都市中京区寺町通二条上ル
HP http://www.ippodo-tea.co.jp/